ライ【完】
「――何書いてるの?」

手紙を書いている途中に

そう聞かれて私は声の方へ顔を向ける。

今日は孫が来る日だっただろうか。

「俺、それ全部志穂から聞きたいんだけど。」

信じられなくて目を見開いた。

そこに立っていたのは

数十年前に別れたときと変わらない

あの学ランを着た雷太で。

「雷太なの―――?」

私が聞くと笑顔で頷いた。

「やっと思い出してくれたんだね。」

そう言って手をさしのべた雷太。

その手を取ろうとしたが、

私はあることに気づいて顔を覆った。

「志穂?」

「見ないで!」

ここ数年出してない大声をあげる。

「私、もう若くないの。よぼよぼのおばあちゃんでしわもたるみも――」

その言葉を遮るように

雷太は私の顔を覆う手を剥がした。

「何言ってるの志穂?ちゃんと見てごらん。」

そう言われて雷太の瞳に映る自分を見て

驚いた。

そこにはよぼよぼのおばあちゃんの姿は

何処にもなくて。

雷太と同じ

高校3年生の時の私がいた。




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