ライ【完】
「市ノ瀬さん、何やってるの?」

そう言って私の前に現れたのは

店長で。

「商品、全然並べられてないじゃないか。君、ここで働き始めてからけっこう時間たってるよね?なんでこんな仕事もできないんだ?」

そう続けて私の前に仁王立ちした。

「すみません。」

私は謝ったが、店長はまだ続ける。

「君はね大体、仕事が遅いんだよ。どんなに働いても仕事は遅いまま。君は何を学んでいるんだい?」

「すいません。」

「困るんだよー、店長としては。どんなにシフト入れてくれても働いてくれないのなら意味がないじゃないか。そういうのって給料泥棒っていうんだよ。」

おばあちゃんの前だというのに

こんなに言われるのが悔しかった。

泣きそうになるのを堪えて唇をかむ。

店長はおばあちゃんの方を見ると

私は教育してます、私は悪くありません、

悪いのはすべて市ノ瀬ですと

いうような口調で言った。

「すいませんねぇ。うちの市ノ瀬が。後でちゃんと言っておきますのでお探しの商品は――「あんたは一体何を言ってるんだい?」」

そう言ったおばあちゃんの口調は

とても冷たかった。

え?

私は思わずおばあちゃんの方を向く。

「えーっと?お客様?」

と店長も困惑してるようだった。

そんな店長を見てはぁーと聞こえるように

ため息をついたおばあちゃん。

「あんたねぇ、鬱憤ばらしにこの子を使ってることくらい見え見えなんだよ。家庭の事情かなんか知らんけど、それを晴らすためにこの子だけになんでそんなに怒鳴り散らすんだい?この子は何も悪くないじゃないか。」

そうずいずいと店長に歩み寄りながら

啖呵を切り始めたおばあちゃん。

店長は後ろに下がりながら

「お客様落ち着いてください。」

とおばあちゃんを止めにかかっている。

でも、おばあちゃんはやめない。

「あんたはこの子の何を見てるんだい?もしかしたらこの子は仕事が遅いかもしれない。それでもこの子の仕事が丁寧なのは変わりがないだろ。この子が入ってから棚に綺麗に商品が並ぶようになったし、商品も取りやすくなった。この子が入ってからこのコンビニを使う客が増えた。そうじゃないのかい?店長さん?」

「それは…」

「コンビニでもこんなに丁寧な店員さんがいるんだ。このコンビニは素晴らしい教育をしているに違いないと感心していたんだよ。それなのに何なんだい?あんたは何を見てここの店長をしているんだい?偉そうに命令ばかりして、そんなコンビニ使いたかないね。」

そう言いきったおばあちゃんに

店長は何も言い返せなくなっていた。
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