ライ【完】
少し走ると

男の人が言い争ってる声が聞こえた。

聞こえる方へ走って行くと

そこにはライがいて。

よかった。と安堵のため息をついた。

事故には遭ってなかった。

だけど、ライは

ライと背の変わらないくらい高い

大人の男の人と口論をしているようだった。

しかも、かなり強面の。

もしかして、ライ、恐喝されてる!?

「ラ――「お前には関係ねーだろ!」」

ライの名前を呼ぼうとしたが

ライの怒鳴り声でそれはかき消された。

ライ、何の話をしているの?

「お前、一体いつになったらあの場所に行くんだ?」

そんなライにドスの効いた声で

強面の男の人は質問する。

あの場所?何のこと?

「そんなの俺の勝手だろ?」

「タイムリミットがあると何度も言ってるだろ!」

「知ってるよそれくらい!」

「お前のわがままはあの女に迷惑をかける。」

「それも分かってる!」

話についていけなかった。

それでも、ただ1つ分かるのは

このまま喋っていても

平行線だということ。

マカロニがいつまでたっても

家に着かないということ。

「ライ!!!!」

私は大声でライを呼んだ。

ビクッと体を震わせて

私の方を向いたライ。

非常に驚いたみたいで

目を見開いて私の方を見ていた。

「志―――穂?」

「もー、遅いじゃない!帰るよ!」

そう言って私はライの手をとる。

私は強面の男の人を見た。

「すみません。うちのライが―「…お前の名前は?」」

謝ろうとしたのに

何故か男の人に名前を聞かれて。

「…市ノ瀬志穂ですけど。」

と答えると

そうかと呟いた男の人。

何なの?一体。

男の人はチラリとライの方を見ると

再び私を見て

「…お前もお前だ。」

と言った。

その言葉の意図が分からなくて

「え?何がですか?」

咄嗟に聞き返す。

意味がわからない。

全くもって。

男の人はため息をつくと

「お前もちゃんと向き合え。そしてよく考えろ。コイツに甘えてちゃコイツも決心がつかねぇよ。」

とライを指差しながら続けた。

向き合う?何に?

考える?何を?

ライに甘えてる?甘えてないよね?

この男の人は

一体何のことを言っているのだろう。

「大体、何で気づかねぇんだ。お前―「もう良いだろ!」」

隣で男の人の次の言葉を遮ったライ。

男の人はそんなライを睨んだ。

「分かってる―分かってるから。だからもう構わないでくれ…オオハシ。」

そう弱々しく言ったライは

ライらしくなくて。

その言葉を聞いた男の人――オオハシは

またため息をついて

「分かったよ。」

と言った。

「…見苦しいところを見せて悪かった。忘れてくれ。」

そう言って私に頭を下げるオオハシに

私は何も言えなくて。

「…行こう。」

そうライが言うと私の手をとって

歩きだした。

オオハシの隣を通るとき

「…あと2日だからな。」

そうライにオオハシが耳打ちしてるのが

聞こえた。


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