ライ【完】
家に着くまで

無言で、ライとは手を繋いだままだった。

私はライの3歩後ろをひたすら歩き続けた。

憧れだった彼氏の3歩後ろを歩くこと。

ライは彼氏ではないけれど

それでも、こんなにぐちゃぐちゃした感情で

歩くなんていつ想像できただろうか。

パタン―

家の扉が閉まり、

外で聞こえてた音も聞こえなくなって

無音の空間が出来上がる。

ライの顔が見れなかった。

――ライ、君は何を知ってるの?

ねぇ、ライ――

「ラ―――イ――」

私が彼の名前をそう呼ぶと

彼はゆっくりと振り返った。

俯いててよく顔が見えない。

「ライ?」

私はライの顔を覗き込むと

驚きで目を見開いた。

「ねぇ、ライ。何で…何で泣いてるの?」

「…泣いてねぇよ。」

「じゃあ……なんで泣きそうになってるの?」

私がそう言い終わった瞬間だった。

私の目の前でライが膝から崩れ落ちる。

「ライ!?」

突然の出来事に

私はしゃがんで彼と目線を合わせた。

「どうしたの?ライ!ねぇ!ライ!」

私が肩を揺さぶってそう問いかけると

「…ごめん―――ごめん志穂。」

そう言ってライは私を弱々しく抱き締めた。
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