ライ【完】
私がベンチに座ると

飲み物を買ってくると言って

私の側を離れたライ。

その表情は少し悲しそうだった。

そんな顔しないで。ライ。

私はどう行動すれば良かったのだろうか。

「ごめんね、ライ。」

私は遠くなった彼の背中にそう呟いた。

――私はライの何を知ってる?

たったの数日しか生活してないけれど

それでも普通は

今よりもっと沢山のことが分かるはずなのに。

だけど、私は何も知らない。

彼が何処で生まれたのか。

彼が何処で育ったのか。

彼の一番好きな食べ物も飲み物も。

どうして高校を辞めたのかも。

彼の苗字も。

彼の――――――初恋の人も。

何も知らない。

「何で……なんで何も教えてくれないの?」

ライが泣きたいのも分かる。

それでも、

こっちも泣きたかった。

何も知らない私が

ライに――――何ができるの?
< 38 / 101 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop