ライ【完】
「ごめん。」

そう言ったのは前を歩いていたライで。

ライは振り向くと、

「志穂、ごめんな。」

ともう一度謝った。

「何のこと?」

私はライに近づいてそう問いかける。

するとライは私の手をさっきよりも少し

強く握った。

「志穂、さっき言ってたじゃん。何で言ってくれないのって。俺、確かに志穂に俺のこと殆ど喋ったことがなかった。」

「うん。」

「俺、その言葉を聞いて気づいたんだ。ああ、俺って志穂にこんなことまで甘えていたんだなって。志穂はずっと気にかけてくれてたんだろ?でも、俺のこと考えて俺が話すのを待っててくれた。それなのに俺は―「もういいよ。」」

私は彼を止めた。

その事は私も悪かったって思ってるから。

「私も悪かったって思ってる。誰にだって喋りたくないことだって、自分で考えたいことだってあるのに私は自分の興味を優先してさっきはライのことを何も考えずに色々言っちゃった。本当にごめんね。」

「そんな―志穂は悪くないよ。」

「それならライも悪くない。」

「そんなことないよ!」

「それじゃあ、お互い様だね。」

私が無理矢理そうやって折り合いをつけると

「全く…志穂には敵わないなぁ。」

とライはやっと笑った。

「ライ、笑って。」

「え?」

「私ね、ライがギター弾いて歌っている姿の次に笑ってる顔が好きなの。」

こんなこと言いたくなかった。

自分でも分かる。

私がライとの別れを意識してるって。

頭の良いライならもう気づいているだろう。

「だから、ライ笑っ―――」

後の言葉はライの唇によって

言うのを遮られた。
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