ライ【完】
洗い物を終えてリビングへ行くと

ライはギターの弦を張り替えていた。

「変えるの?」

私の質問に頷いたライ。

「やっぱりちゃんと弦の使える期間守って使わないとギターが可哀想だろ。」

そう言ってニッパーを使って

バチんと古い太い弦を切る。

それから新しい弦を穴に通して

ペグでクルクルと弦を巻いていった。

「…錆びたら変えるじゃダメなんだね。」

そう言うとライは怒った。

「きっと志穂の元カレもそうだっただろ。こんなん見せたら元カレキレるどころじゃすまないと思うよ。」

そう言って私の前につき出した

1本の楽器。

「ライ―――これ…――」

「掃除してて見つけた。楽器が泣いてるよ。」

ずっとカバーをかけてて見なかった。

奥にしまってたのに…

ライに言われてもう一度その楽器を見ると

楽器―――

弦が殆ど錆びてしまって

1本の弦は切れてしまったベースは

少し悲しんでいるように見えた。
< 51 / 101 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop