ライ【完】
「切れた――ライ!切れたよ!」

そう言ってはしゃぐ私に

「良かったな。」

と笑顔でライは応えた。

ライの手が温かくて

ライが自分の手に力を込めるほどその

ぬくもりは伝わってきて

幸せだなと思ったのは本人には内緒だ。

「ほら、3弦残ってる。最後は自分で切ってみ。」

ライに言われて私は頷くと

3弦にニッパーを挟んだ。

取っ手に力を込める。

すると、意外とすぐに

バチんと言って弦が切れた。

「切れた――やった!ライ!」

そう言って振り返ってライを見ると

私が想像していた無邪気なライは

ここにいなくて。

何だか大人びた表情で

立っていた。

「やればできるじゃん。」

そう言って私を見下ろすライ。

「良くできました。」

と続けて、ライは私の頭を優しく撫でた。

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