ライ【完】
そう。

私はたったの2年で

元カレの顔を忘れてしまったのだ。

「でも、志穂この前言ってたじゃん。元カレが綺麗な二重瞼だったって。」

ライが何で?という顔でそう言うが

私は首を横に振るしかない。

「そういうのは覚えているんだけどね。…身長とか顔全体の感じとか…覚えてないんだよね。」

デートの時はプリクラ撮ろうって言っても

嫌がってとってくれなかったし、

何より撮った回数が少ない写真も

彼が引っ越す前に私が携帯を水没させたことで

消えてしまった。

「本当に最低だよね。覚えてないとか。だから、私も彼のこと責めれない。」

黙って聞いていたライは

「そっか…」

と言うと

「できたよ。」

と張り替えの終わったベースを見せてくれた。

いつの間にかボディーもピカピカになっている。

「クロスで磨いといた。」

そうライは言うと

少しうつ向いて

「思い出したくない事聞いてごめん。」

と続けて謝ってきた。

ライは悪くない。

でもライ、

何で君が泣きそうになってるの―――?

「大丈夫だよ。顔上げて。ライ。」

そう言ってもライはうつ向き続けた。

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