ライ【完】
ジャンッ――――

最後の音の余韻が耳に心地よく残った。

「志穂―――下手くそ。」

そう言ったライの頭を私はグシャグシャにして

反抗する。

「しょうがないじゃん!2年も弾いてないんだもん!3フィンガーの所とか指吊るかと思った!!」

私がそう言うとライは笑った。

「悪かったって。―――でも、2年のブランクがあってあれだけ弾ければ凄いな。」

「そりゃ鬼のベースレッスンサボらせてもらえなかったもん。」

「鬼のベースレッスン?……それって」

「そ。元カレの。」

そう言うとライは大きな声で笑い出した。

「そっかそっか…鬼か。」

「本当に鬼だったの!!」

鬼のレッスンを

信じられないという顔で笑うライに

私は信じてよと言い返した。

「嫌だった?」

「当たり前じゃん!…最初はね。でも――」

「でも?」

「そうやって一生懸命頑張っている彼の姿を見るのが大好きだったから頑張れた。」

ライに言ったこれは

元カレにも言ったことのない本心だった。
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