ライ【完】
「志――「…ライのバカ。」」

私はライの膝の上にギターが乗っているのにも

かかわらず、

ライの首に腕を回し、顔を彼の肩に埋めた。

ゴトンと

ギターのヘッドが床につく音が聞こえる。

嗚咽が止まらない。

「バカ…ライのバカ……大バカ。」

「大バカってなんだよ?小学生かよ?志穂――「…行かないでよ。」」

顔を肩に埋めているせいでライの顔は見えない。

それでも、別れの寂しさを感じさせないライに

内心腹が立って、そして悲しみが膨れ上がる。

―――歯止めがきかなかった。

言っちゃいけないって分かってた。

でも、言い出したら止まらなくて。

「ねぇ、ライ。お願い。行かないでよ。ねぇライ…」

そう言って泣きじゃくる私の背中を

ライは優しくポンポンとたたいた。

その優しさが

かえってまた悲しみを倍増させる。

「何プレゼントなんか買ってるの?……本当ライ、バカだよ……。ライのこと忘れられなくなっちゃったじゃん…どうしてくれるの?」

「うん…」

「しかも妙に私と音楽の趣味合っちゃったりしてさ…本当ライのバカ。」

「うん…」

ただうんと頷くだけの彼に

また涙が溢れてきた。

何がうんなの?

何か喋ってよ。

こんなに余裕がないの私だけなの?

私はライの肩から顔をあげると

わざと目線をそらして続けた。
 
「…ライは平気なんでしょ?私とお別れしても……私は嫌だよ。絶対に嫌!ライのことが大好きになっちゃったんだもん!…でも、ライは私と別れることくらい「――あのなぁ!!」」

ライの怒鳴り声にビクリと体が震えた。

首に回していた手を引っ込める。

「――志穂。こっち見ろよ。」

「嫌。」

「志穂!」

「嫌!!―――」

私の拒絶を自分の手によって

無理矢理といたライ。

彼の右手によって私の顔はライの方に向けられ

彼の左手によって私の右手が

彼の頬に当てられた。

右手から感じるライの温もりと

そこに伝う一筋の冷たい雫。

「ラ――イ―?」

ライは泣いていた。




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