ライ【完】
12:54
このときまで私とライは黙っていた。
『二番ホームに電車、―――行が参ります。』
と無機質なアナウンスのあとに
駅員さんが追加のアナウンスを入れている。
「ねぇ、――ライ。」
私は重たい口を開いた。
「ん?」
手は繋いだままだ。
「…約束しよう。」
これが私が考え抜いて出した
1つの答えだった。
「いつ会えるか分からないけれどね、いつかライと会えるときが来たらその時は必ずライが私を迎えに来るの。そしたらその時は今みたいに手を繋いで一緒に海に行こう。」
そのいつかが訪れないことくらい
分かっていた。
それでも、約束をしないよりかはマシだった。
そのいつかに賭けてみたかった。
12:56
電車がホーム内にゆっくりと入ってきた。
まだ、ライは黙ったままだ。
12 :57
電車が完全に止まり、扉が開いた。
誰も降りてこない。
あと、1分。
あと、1分後には出発してしまう。
するとライは私と繋いでいた手を離した。
そして何も言わずに電車の入り口に向かって
歩き出す。
え――?待ってよ。ライ。
さっきの話聞いてなかったの?
ねぇ、こっち向いてライ。
ねぇ、ライ―――
「――約束だからな。」
白い息を吐きながらライは言った。
確かに聞こえた。
11月下旬。
もうすぐ冬が来る。
「――必ず迎えに行く。その時は必ず――」
ライは私の目の前まで戻ると
触れるだけのキスをした。
「一緒に海で歌おうな。」
そう言って、満面の笑みを残して。
『12 :58発快速電車――』
発車アナウンスが放送され、
ライは電車に乗り込んだ。
――もう、ライを困らせたりしない。
窓から見えるライに私は満面の笑みで
手を振る。
ライも笑顔で手を振ってくれた。
扉が閉まり、駅員さんのホイッスルが聞こえた。
ゆっくりと電車が動き出す。
横に流れていくライを私は追いかけた。
歩いて、電車が加速して早歩きになって、
また加速して今度は走って――
駅員さんにアナウンスで注意されたが
気にしなかった。
「ライ!!!!」
そう叫んで私は駅の端まで走って
ライを見送った。
このときまで私とライは黙っていた。
『二番ホームに電車、―――行が参ります。』
と無機質なアナウンスのあとに
駅員さんが追加のアナウンスを入れている。
「ねぇ、――ライ。」
私は重たい口を開いた。
「ん?」
手は繋いだままだ。
「…約束しよう。」
これが私が考え抜いて出した
1つの答えだった。
「いつ会えるか分からないけれどね、いつかライと会えるときが来たらその時は必ずライが私を迎えに来るの。そしたらその時は今みたいに手を繋いで一緒に海に行こう。」
そのいつかが訪れないことくらい
分かっていた。
それでも、約束をしないよりかはマシだった。
そのいつかに賭けてみたかった。
12:56
電車がホーム内にゆっくりと入ってきた。
まだ、ライは黙ったままだ。
12 :57
電車が完全に止まり、扉が開いた。
誰も降りてこない。
あと、1分。
あと、1分後には出発してしまう。
するとライは私と繋いでいた手を離した。
そして何も言わずに電車の入り口に向かって
歩き出す。
え――?待ってよ。ライ。
さっきの話聞いてなかったの?
ねぇ、こっち向いてライ。
ねぇ、ライ―――
「――約束だからな。」
白い息を吐きながらライは言った。
確かに聞こえた。
11月下旬。
もうすぐ冬が来る。
「――必ず迎えに行く。その時は必ず――」
ライは私の目の前まで戻ると
触れるだけのキスをした。
「一緒に海で歌おうな。」
そう言って、満面の笑みを残して。
『12 :58発快速電車――』
発車アナウンスが放送され、
ライは電車に乗り込んだ。
――もう、ライを困らせたりしない。
窓から見えるライに私は満面の笑みで
手を振る。
ライも笑顔で手を振ってくれた。
扉が閉まり、駅員さんのホイッスルが聞こえた。
ゆっくりと電車が動き出す。
横に流れていくライを私は追いかけた。
歩いて、電車が加速して早歩きになって、
また加速して今度は走って――
駅員さんにアナウンスで注意されたが
気にしなかった。
「ライ!!!!」
そう叫んで私は駅の端まで走って
ライを見送った。