ライ【完】
コンパの会場となった居酒屋へ行くと

コンパは既に始まっていて。

こっちこっちと手招いてくれた

鈴の隣の席についていた。

『志穂が来るなんて珍しいね。』

そう言って隣で微笑んだ鈴。

そんな鈴に私は事情を説明する。

説明し終わると鈴は

ああ、だからね。というような表情を見せて

続けた。

『だから今日蒼先輩の機嫌が良かったのかぁ。』

鈴は蒼先輩のバンドで

キーボードを担当していた。

だからもちろん私への勧誘のことも

知っていて。

『いい加減蒼先輩諦めてくれないかな?』

鈴にそう言うと、鈴は笑いながら

首を横に振った。

『それは無理だよ。蒼先輩、志穂に惚れ込んでるもん。』

『ベースでしょ!――でも何で??それに蒼先輩、何処で私の演奏を聞いたの?』

『んー、知らない。』

そんな話をしていると

私のところにやって来た噂の人物。

『志穂ちゃん本当に今日ありがとね。』

蒼先輩は私の隣にドカッと座ると

私のテーブルの前にジョッキを

ドンっと置いた。

『志穂ちゃんせんれつ誕生日だったれしょ?もうお酒飲めるよね!』

『飲めますけど…』

既に呂律が回らなくなっている先輩に

恐怖を感じる。

『今日はバンバン呑んで!呑んで!呑みまくろうよ!志穂ちゃん!』

『はぁ…お手柔らかにお願いします…』

こうして蒼先輩は

ビールを飲み干すと

どんどん私の分も追加注文するのだった。
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