ライ【完】
「お久しぶりね。――綺麗になって。」

そう言って私の側まで来た雷太のお母さん。

3年前と比べ、白髪が増えたものの

以前みたいな憔悴しきった顔ではなく

私に向けられたお母さんの笑みは

雷太が生きていた頃と変わらないものだった。

「雷太に―――会いに来てくれたのね。」

「はい。――遅くなってすみません。」

私が雷太のお母さんにそう頭を下げると

雷太のお母さんは良いのよと

優しく言ってくれた。

「やっと、雷太に向き合うことができました。」

私の言葉に安心したのか

微笑んだお母さん。

「そうなのね。私、ずっと志穂ちゃんが心配だったの。」

雷太のお母さんはそう言うと

お線香を取り出して火を点けた。

「雷太。志穂ちゃんが来てくれたよ。貴方もずっと心配していたでしょ?良かったねぇ…」

そう言って手を合わせたお母さん。

私もその隣で手を合わせた。

「お墓のお掃除もありがとね。雷太、きっと喜んでいるわ。」

お母さんの言葉に私は

「いえ、今までずっと――言い方が悪いですが逃げていたので。だからお墓掃除は絶対しようって思っていました。」

そう言うとニコりと微笑んだお母さん。

「そういえば、話は変わるけれど…大学でベースは続けてるの?」

「はい。――1年前からですけど。」

――私が退院した後、

真っ先に行った場所は蒼先輩の所だった。



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