名付けないで。(BL)
俺は重ねた瞬間、黒澤に舌を入れる。
そのままねっとり絡ませながら
チラッと黒澤を見た。
さっきより艶を含ませた黒澤の瞳。
それにニヤリと笑いながら
黒澤の背中に手をまわす。
口内のゆっくりした音が更衣室に
響く中、
黒澤が突然唇を離した。
俺が首を傾げると
そのまま唇を開く。
「……そのていど???」
「……へ?」
俺が眉を寄せた瞬間、また重なる唇。
さっきの俺とは真逆で激しくでも優しい
黒澤のキス。
「んぅ……はぁ……っ……ふぁ」
漏れる吐息。
熱を増す体温。
ぜんぶ黒澤のせい。
こんなキス知らない。
キスだけで腰砕けになる俺を黒澤は
腕で支えて、でも舌の動きはやめなかった。
そのまま数分間キスが続いたあと、
黒澤はやっと唇を離した。
「はぁ……はぁ」
まだ呼吸が整わない俺は
潤んだ瞳で黒澤を見つめる。
こいつに抱かれたい。
正直、金なんて貰わなくていいけど
一石二鳥だと思って始めた仕事。
だけどその中でもこんなに抱かれたいって
思う男はいなかった。
抱いてくれるなら誰でも良かったから。
「桃倉、お前可愛いな。」
そう言って今度は首に唇を
近づけてきて
「……黒澤??」
そして首筋に吸い付いてきた。
「んっ…ちょ、だめっ」
いつもヤる奴には必ず跡は付けるなって
約束してるのに!
少し吸われて唇を離されると
ペロンと舐められてそれにまた感じた。
「……んっ
ここまでしたなら最後までしろよ」
もう勃っちゃってどうしようもねーし。
だけど黒澤はそんな俺を見て笑った。
「いつも誰かとヤって出してるんだから
今日は独りで悶えてろ。」
そう言って出ていこうとする黒澤に
俺は縋り付く。
「……え?うそだろ?
見ろよ、俺のもうこんなんなって……あぁっ」
黒澤におねだりすると
そこをぎゅっと優しく掴まれる。
思わず感じちゃって声が出た。
「……また今度な。」
「……くろさわっ……ん。」
すがる俺にちゅっとフレンチキスをして
黒澤は出ていった。
うそだろ。
この俺が。
独りで自慰行為だなんて……
「んっ……あっん…はぁはぁ…あっ」
黒澤が出ていったあと、
誰かを呼び出す余裕も無く、
俺は黒澤に言われた通り自分のモノに
手を伸ばしていた。
独りでとか何年ぶりだよ……っ
でも気持ちよくてだんだん速まる
自分の動きにあんあん言いながら
絶頂に向かっていく。
「はぁ…はぁ…はぁはぁッ…うっ」
ドアの外に黒澤がいることになんて
気づきもしないまま。