見えないなら繋いで・大学生編
「そういう世間知らずなとこが心配なんだけど」
「え…?」
「そういうサークルって言ったらヤリサーのこと。テニスとか飲みサークルとかあるでしょ、怪しいのが」

珍しく語気を強める真壁くんにびっくりしながらもあからさまな単語にカッと顔が熱くなる。

「そういうのに捕まらないか心配だって言ってる」

若干やけくそに近い早口な声音で真壁くんは言った。
触れられた右手が熱くて、顔が上げられない。

「…聞いてる?」
「う、うん…えと、真壁くんが、心配してくれて嬉しくて…」

ちらりと上目遣いに真壁くんを見上げると、急に右手を引かれて同時に真壁くんが体ごと近付き、綺麗な顔が息のかかる距離にきて呼吸が止まりそうになった。

「…何もしないって言ったけどもう無理」
「え……っん」

そのまま首を伸ばした真壁くんの唇が私の唇と重なった。

一瞬頭の中がパニックになりそうになったものの、そっと重ねるような優しい触れ方に強張った身体から徐々に力が抜けていく。

二回目のキスだ…。

少しだけ余裕がでてそう思ったとき、右手に触れていた真壁くんの手が後頭部に回り、ぐっと頭を近づけられたかと思うと予想もしないことが起きた。

「んっ!…んんっ」

熱い舌が唇を割り、口の中に侵入してきた。
初めての感覚にびくりと身体が震えて引きそうになるけれど、後頭部を押さえられて逃げることもできない。
驚いたままの舌に真壁くんのそれが絡まって恥ずかしい水音が耳に届いた。
あまりの恥ずかしさに生理的な涙がこみ上げる。

「ふ…っ」

こんなの知らない。
恥ずかしい。
何も考えられなくなる。

それなのに、舌が動く度にぞくりと震えが走るような気がする。

もう限界だと思ったそのとき、ようやく唇が離れていった。
目を開けると見たこともない真壁くんの余裕のない顔に胸が激しく高鳴る。

「…ごめん、我慢できなかった」
「…っ」

そんなこと言われたら何も返せない。
恥ずかしい。キスの後って、どんな顔するものなの。
目が合わせていられなくて視線を床に落とす。

「嫌だったらごめん」

上から降ってきた声に慌てて首を左右に振った。

嫌じゃない。
そんなこと少しも思わなかった。
ただ、恥ずかしくて。

気恥ずかしさに押されて上手く言えないまま黙り込んでしまった。

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