イケメン小説家は世を忍ぶ
1、意地悪な先生
彼との出会いは、一本の電話から始まった。

『結衣か?ゴホッ……至急桜井健先生のところに行ってくれ』

オフィスでメールをチェックしていたら、伯父から電話がかかってきた。

伯父は私が勤める朝倉出版の社長。朝倉出版は、本の街で有名な神田神保町の雑居ビルの三階にある従業員がたった三人という小さな出版社。

私はこの春に入社した社員で朝倉結衣、二十二歳、独身。

髪は黒髪で腰まであるストレート。

顔は目は二重でパッチリだけど、童顔だし身長も百五十三センチと低く、よく中学生に間違われる。

本が好きでここに入社したわけではない。

就職試験を全て落ちてしまった私の行く末を心配した母が伯父に頼み込んで、朝倉出版にコネ入社したのだ。

小さい出版社だけど、うちの出版社は本を出せば必ず百万部は売れる桜井健という超売れっ子作家と専属契約している。
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