イケメン小説家は世を忍ぶ
図々しいかな?と思ったが、戸棚からティーカップとティーポットを出して紅茶の準備をする。

その時、桜井先生の視線を感じたので、彼に声をかけた。

じっと見られたのでは緊張して高価そうなカップを割ってしまいそうだ。

「先生は座っていてください。その右手、どうされたんですか?」

「紅茶を淹れようとしたら、猫に邪魔されて火傷をした」

火傷をして右手が不自由なのか。だから、私が呼ばれたのかな?

ひとり暮しで身の回りの世話が必要とか?

聞きたいけど、個人的な質問をこの先生にぶつけるのはマズイよね。

「猫飼ってるんですね」

当たり障りのない話を口にし、紅茶を淹れる。

「いや、庭に遊びにくるんだが、餌をやると家の中に入ってくるんだ」

桜井先生はソファセットの椅子に腰かけて脚を組むと、ノートパソコンを開いて何やら操作し出した。

桜井先生の分だけ紅茶を持っていくと、彼の前のテーブルに置く。
< 11 / 284 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop