イケメン小説家は世を忍ぶ
そう考えずにはいられない。

だが、もうよそう。

死んだ人間のことを考えたって仕方がない。

いくら考えたって、父も母も生きて戻ってはこないのだから……。

今の俺には、他に考えるべきことがたくさんある。

「……殿下、殿下!」

ユアンが俺を呼ぶ声がして、ハッと我に返る。

「あっ……悪い。何か言ったか?」

「実は……広尾の家に待機させている部下から連絡がありまして、殿下の可愛がっている子猫がSDカードを持っていたそうなんですが、そのカードに入っていた映像が……」

ユアンはそう言って俺にスマホの動画を見せる。

そこに映っていた人物を見て、俺は驚きで目を見張った。

「……結衣」

俺は呆然と呟く。

結衣は手足を縛られ、さるぐつわをされていた。
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