イケメン小説家は世を忍ぶ
彼女の目は閉じられたまま。

食い入るような目でスマホの中の結衣を見つめる。

「どうして目を開けない？」

何故結衣がこんなことに……。

動画には三十代後半くらいのセピオンの軍服を着た男が映っていて、カメラ目線で俺に要求を伝える。

恐らく……頬に傷のあるこの男は、アーロンの部下なのだろう。

『この女を助けたければ、ケント殿下ひとりで調布の飛行場まで来い。午後九時までに来なければ、この女は殺す』

男は手に持っていたナイフでペチペチと結衣の頬を叩く。

すると、結衣はゆっくりと目を開け、今の自分の状況を理解したのか、その目は驚愕に震えていた。

「この頬に傷のある男……見覚えがあります。アーロンの腹心の部下でマックスとかいう名前だったような」

ユアンが思い出したように呟く。

動画はそこで終わっていて……思わずスマホを睨み付けた。
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