イケメン小説家は世を忍ぶ
とりあえず結衣が目を開けたことにホッとすべきなのだろうが、状況はかなり悪い。

ただの脅しではない。

あの男の目は、本気で結衣を殺すと言っていた。

俺がひとりで行かなければ、男は本当に結衣を殺すだろう。

彼女を巻き込みたくはなかったのに……。

腕時計に目をやれば午後八時過ぎ。

「ユアン、至急ヘリを一機用意するよう頼んでくれ。時間がない」

俺はスマホをユアンに返すと、口早に指示を出す。

「まさか……殿下が行くつもりですか?」

ユアンは目を見開いて俺を見る。

「俺を名指ししてただろうが。下らない質問はするな」

ユアンに冷ややかな視線を投げる。

「罠とわかってて行くバカがどこにいるんです?アーロンに捕まりますよ!」

俺と付き合いが長いせいか、ユアンの言葉には遠慮がない。
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