イケメン小説家は世を忍ぶ
「ですが……」

「反論するな。大丈夫だ。俺はそう簡単には死なない。この指輪があるからな」

安心させるように笑って左手の指輪を見せると、近くにいた兵士に出発するよう頼んだ。

ヘリに乗ってすぐにスマホを何気なく取り出して見てみると、メールがいくつか来ていて、その中に結衣からのもあった。

他のメールは後回しにして彼女のメールを見ると【先生、ごめんなさい。早く逃げて】 という文面が来ていて……。

「あのバカ……」

俺の心配なんかしてる場合か……。

どうか無事でいてくれ。

一分一秒が長く感じる。

最新鋭の機体だけあって、ヘリは十分ほどで調布の飛行場に着いたが、それでも今の俺には倍の時間がかかったように感じた。

兵士には一切手を出すなと伝え、俺を降ろしたらすぐにこの場を去るように合図を送った。
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