イケメン小説家は世を忍ぶ
逃げたくても逃げられない。

目だけを動かし、周囲を確認すると、小さい窓がいくつもあってここは飛行機の中なんだとすぐにわかった。

左側にはシートが八~十席くらい。

普段私達が乗る飛行機と違って小さいけど、こんなソファがあるってことは個人用なのだろうか?

暗くて分かりにくいけど、窓からは空港らしき建物がうっすら見えるし、エンジン音がしないからこの飛行機は動いていない。

耳に聞こえるのは知らない言語。

英語ともフランス語とも違う。

軍服を着た身長百九十センチほどの体格のいい男性が三人はいる。

知っている人間はいない。

頬に傷のある男が身を屈めて私に英語で話しかける。

「お前は、ケント殿下の女か?」
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