イケメン小説家は世を忍ぶ
桜井先生には守るべきものがいっぱいある。

私なんかに構ってる場合じゃない。

……もうすぐ死ぬのか……私。

男が持っているナイフを見て、ゴクッと息を呑む。

自分がこのナイフで刺し殺される姿が脳裏に浮かび、震えずにはいられなかった。

こんな状態では助けも呼べない。

呼べたとしても、誰が彼らと戦えるだろう?

相手は他国の軍の関係者だし、警察を呼んでも無駄だ。

……絶望的。

そんな言葉が頭に浮かび、目の前が真っ暗になる。

もう二度と両親や伯父さんに会えないのかと思うと辛くなった。

辛くて悲しいのに……怖くて涙も出ない。

せめて痛みを感じずに死ねたら……と、この期に及んでそんなことを考えてしまう私は、愚かな人間なのかも。
< 127 / 284 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop