イケメン小説家は世を忍ぶ
そんなことを考えていると、頬に傷のある男が私の髪を一房取ってまじまじと眺めた。

「それにしても綺麗な黒髪だな。殺すのは止めて、闇市で売り飛ばすか?きっといい値がつくぞ」

男は淫靡な笑いを浮かべると、私の髪から手を離し、今度は私の顎を掴む。

ごつい指で触れられ、ゾクゾクッと悪寒がした。

闇市で売り飛ばすって正気なの?

それならここで殺された方がマシだ。

誰にも期待は出来ないのに、心の中で助けを呼ばずにはいられなかった。

誰でもいい……お願いだから、私を助けて。

ギュッと目を閉じ、必死で祈る。

「もう十歳大人なら俺の女にするんだが……」

男が残念そうに呟いたその刹那、飛行機の搭乗口のドアが開いて男が数人入ってきた。
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