イケメン小説家は世を忍ぶ
月明かりの中でも、結衣の足の状態ははっきりわかった。

パンプスで山道を歩いたんだ。

痛くならない方がおかしい。

左足も見て見ると、右足と同じよう状態で……。

「痛くなんかありません!」

結衣は声を荒げて否定する。

「気づかなくて悪かったな」

結衣の足をそっと撫でながら謝ると、持っていたリュックを下ろした。

この足じゃあ、これ以上歩くのは無理だ。

「結衣、そのリュック背負え」

リュックを指差すと、結衣はキョトンとした顔をした。

「え?」

「いいから、早く」

結衣を急かしてリュックを背負わせると、「じゃあ、次は俺の背におぶされよ」

結衣に背中を向けて待つが、彼女が動く気配はない。
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