イケメン小説家は世を忍ぶ
本当はもっと進みたかったが、結衣のことを考えると、ここで休憩を取った方がいいだろう。

周囲の安全を確認すると、結衣を平地に下ろした。

「ここで休もう」

結衣に声をかけ、彼女の背負っていたリュックを下ろして中を開ける。

リュックには防寒のためのアルミのシート、毛布、食料三食分、五〇〇mlのペットボトルの水二本、コンパス、救急道具とナイフが入っていた。

「……いろいろ入ってるんですね。そう言えば、あの兵士さん、ケントのこと崇拝するような目で見てましたけど」

「セピオンでは、王は神に近い存在だと国民に思われてるんだ。王を裏切る立場になっても、その信仰を彼みたいに捨てられない者もいるんだろう」

そう説明しながら救急道具を出して結衣の足に目をやる。
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