イケメン小説家は世を忍ぶ
「お前が悪い。今度同じようなこと言ったら、またその口を塞ぐ。キスされたければ別だがな」

嫌みったらしく言って、ケントは乱れた前髪をかき上げる。

「だって……私がいたら……」

反論しようとしたが、ケントの台詞を思い出し、ギュッと唇を噛んだ。

「お前は何も悪くない。自分を責めて悲しいこと言うなよ」

ケントは私の頬に手をやると、顔を近づけ私のおでこに自分の額をコツンと当てた。

「捨てていい命なんてない。朝倉さんだって、お前の両親だって、きっと心配してる。必ず日本に帰してやるから」

優しく説き伏せるようにケントは言う。

彼の言葉は私の胸に直接響いた。

「わかったか?」

ケントの優しい声に、私は彼の目を見て頷く。

「はい」

私の返事を聞いてケントが満足げに微笑むが、その瞬殺力抜群の笑顔にキュンとなる。
< 172 / 284 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop