イケメン小説家は世を忍ぶ
もっとケントのことを知りたいって思った。

「四十代なわけないだろ。二十七だ」

面白そうに笑ってケントは私の頭を軽く小突く。

「二十七……私より五つ上なんだ」

「そうだ。その分、お嬢ちゃんより経験豊富ってことだ。ほら出来たぞ」

ケントがヒーターで温めたレトルトパックを私に手渡す。

コーヒーまで用意すると、私達は朝食を食べ始めた。

「……このビーフシチューかなり塩味きいてますね」

正直言ってマズイ。

「戦闘糧食だからな。高カロリーで塩分も多い。佐代さんの食事と比べると最悪だな」

ケントも同じことを思ったようで顔をしかめた。

「そうですね」

相づちを打ちながらケントと目を合わせ微笑み合う。

ちょっとホッとする……この時間。

シチューはマズイし、お皿もなかったけど、楽しい食事だった。
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