イケメン小説家は世を忍ぶ
食事を終え、片付けを済ませると、何か決意したかのようにケントが告げた。

「山を下りてフランスに向かう」

私を背負うとケントは、黙々と歩く。

それは数時間続いた。

どれくらい歩いたのかわからない。

山道とはいえない茂みの中を通り、服は汚れてところどころ破れている。

崖のようなところを降りる時は、怖くてケントにしがみついた。

「ここで休憩」

そう言って木陰に私を下ろすと、ケントは額の汗を拭う。

疲れただろうなあ。

私をおんぶしてずっと歩いてるんだもん。

「私……ダイエットしようかな」

ふとそんなことを思う。

すると、上からケントの声が降ってきた。

「止めろ。抱き心地が悪くなる」
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