イケメン小説家は世を忍ぶ
え?私……声に出してた?

顔を上げると、ケントがニヤリとしながら腕を組む。

「痩せると胸がなくなるだろ?それは好ましくない」

やはり聞こえていたらしい。

こっちは気を使っているのに……。

「何ですか?そのスケベな発言。それでも王子様ですか?」

ケントに軽蔑の眼差しを向けると、彼は黒い笑みを浮かべ言い放った。

「王子だって人間だ。人並みに欲望くらいある」

「そこ……開き直らないでくださいよ。王子様って……こう爽やかで、物腰が柔らかで、紳士なはずなのに……何であなたは……」

私がぼやくと、ケントは苦笑いした。

「それは全部お前の妄想だろ。現実を知れよ。王子だって……」

そう言葉を切ってケントは身を屈めると、私の胸元にチュッと口づけ「ただの男だ」とセクシーボイスで囁いた。

「ちょっ……ケント~‼……うぐっ」

文句を言おうとケントの名前を叫んで彼の腕を掴むと、彼は突然表情を変え、手で私の口を塞ぎ、“静かに”という意味で人差し指を立てた。
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