イケメン小説家は世を忍ぶ
『ナイフ』?

いつの間にそんなとこに隠したの?

ケントの襟元に手を触れると、固い感触がした。

「あっ、これか」

内側に指を入れれば、彼の言うように五センチ位の小さなナイフがあった。

折り畳み式のそのナイフを取り出し、ナイフを伸ばしてケントの手に握らせると、彼は器用にロープに切り込みを入れてほどく。

「……スパイみたい」

感心したように呟くと、ケントは自嘲するように笑った。

「まあ、王子に生まれるのも楽じゃないってことだ」

「でも……どうして私のロープだけ緩かったんだろう?」

私は小首を傾げる。

「アーロンやマックスが俺に近づく可能性があったからだろうな。結び目を見れば気づくだろうし」

「なるほど」
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