イケメン小説家は世を忍ぶ
私が頷くと、ケントは私の手を掴んだ。

「さっき痛めたとこ、血が出てる」

怪我した指を見て、ケントが私の指を躊躇いもなく口に運びペロッと嘗める。

「あっ」

まさか自分の指を嘗められると思っていなかった私は、呆然とした。

「消毒」

私の目を見て、ニヤリとするケント。

「……しょ、消毒って嘗めないで下さいよ」

やられるこっちが恥ずかしい。

この状況で……私をからかう余裕があるなんて……。

「虫歯菌はないから安心しろ」

白い歯を見せニコッと笑うと、ケントは立ち上がり、窓の方へ向かう。

「結構高いな」

そう呟いてケントは手を伸ばして窓枠に指を置くと、指の力だけでひょいとジャンプして窓枠の上に乗った。
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