イケメン小説家は世を忍ぶ
私のロープを縛り終えると、ケントはポケットからスマホを取り出す。

彼は画面を少し操作すると、すぐにポケットにしまった。

「大丈夫。そのうち助けは来る。俺の部下が来たら、お嬢ちゃんは俺に構わず先に逃げろ」

ケントの指示を聞いて不安になる。

ここまでずっと彼と一緒だったのに……。

「ケントは逃げないんですか?」

「面倒な奴らがいるからな。お嬢ちゃんが俺の言うこと聞いて逃げてくれないと、俺も安心して戦えない」

私が反論出来ないように言うと、ケントは自分のロープも絞め直す。

それから私達は、何時間もお互いのことを話した。

子供の頃の話や両親の話や大学時代の話……。

彼は、自分の名前の由来も話してくれた。
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