イケメン小説家は世を忍ぶ
「そうみたいだな。だが、ここでくたばるわけにはいかない。守るべきものがあるからな」

ケントが私を見て意味ありげに笑うが、その時、胸がチクンと痛んだ。

王子様は……本当に王子様なんだなって、しみじみ思う。

だって彼は、お姫様じゃない私を守ろうとしてくれる。

本当は遠い存在の人なのに、こんな近くにいるから勘違いしそうだ。

多分、ケントにしてみればそれは普通のことなのだろう。

私が特別というわけではない。

相手が誰でも彼は守ると思う。

ケントは好きになってはいけない人。

私とは別の世界に住んでいる人だ。

ここから脱出出来たら、ケントは私の手の届かないところへいってしまう。
< 196 / 284 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop