イケメン小説家は世を忍ぶ
セピオンのためを思うなら喜ぶべきだ。なのに、そう考えると胸が苦しくなる。

何故こんなに辛いんだろう?

コンクリートの床をじっと見てそんなことを考えていると、ケントが心配そうに私の顔を覗き込んできた。

「どうした?疲れたのか?」

「……ずっと緊張しっぱなしで、気が休まらなくて」

咄嗟にそう言って誤魔化すと、私は力なく笑った。

「ここじゃ寝れないかもしれないが、目を閉じてるだけでも少し疲れは取れるぞ」

ケントのアドバイスを聞く振りをして目を閉じる。

それからどれくらい経っただろう?

ヘリコプターの音が聞こえてきて、周囲が騒がしくなる。

「やっと来たみたいだな。結衣、ロープを外すぞ」
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