イケメン小説家は世を忍ぶ
男の俺でも正視するのが辛かった。

ユアンが持ってきたファーストキットを開け、箱の中から消毒薬とピンセット、止血用のガーゼを取り出す。

麻酔なんて便利なものはない。

着ていたジャケットを脱ぐと、舌を噛まないよう結衣にそれをくわえさせた。

「結衣、ちょっと我慢しろよ。ジェイク、結衣の身体を押さえてくれ」

傷口を消毒すると、機体が揺れる中、ピンセットを使って探るように弾を探す。

あまりの痛みに結衣は暴れだし、ジェイクが必死で押さえた。

「結衣、あともうちょっとだ」

俺も左手で結衣の肩を押さえ、何とか弾を取り出すが、結衣の呻き声が耳に痛かった。

麻酔なしだ。
< 210 / 284 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop