イケメン小説家は世を忍ぶ
だとしたら……。

「お前、バカだな」

そう苦く呟くと強く下唇を噛み、結衣の頬に触れた。

触れた頬が熱い。

撃たれたせいで熱が上がってきているのかもしれない。

止血はしたが、まだ危ない状態なのか?

病院にも行けない状況なのに……。

「『先に逃げろ』って言ったのに……何故従わなかった?」

気を失っている結衣に向かって問いかける。

俺が代わってやれればって思う。

自分は……こうやって彼女を見てるしかない。

こんな事なら結衣に初めて会ったあの日、カフェで見かけても声をかけるんじゃなかった。

俺が結衣を巻き込まなければ、彼女は日本で平和に暮らしていたはず……。
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