イケメン小説家は世を忍ぶ
目頭が熱くなり、何か温かいものが頰を伝った。

「怖がらなくていい。俺に全部任せろ」

ケントは私の頰をつたる涙をペロリと舐めると、私の耳元でそう甘く囁いた。

「うん」と頷く間もなく、彼は私の身体中隈なく口付けると、ゆっくり身体を重ねてくる。

今、この瞬間、彼は私のもの。

多くは望まない。

相手は王子様だ。

ただ、彼を感じて一つになりたかった。

『好き』なんて絶対に言えないけど……。

今夜だけでいい。

私だけの王子様でいて……。

ケントの顔を引き寄せると、自分の想いを込めてキスをした。



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