イケメン小説家は世を忍ぶ
城で暮らしていた時のように、社交の場には出なかったし、世捨て人のような生活をしていたから女に悩まされる心配はせずに済んだ。

だが、結衣には自分から絡んでいった。

多分出会った時から、彼女の容姿や俺に対する挑戦的な態度を気に入っていたからかもしれない。

結衣をからかうのが楽しくて何度も彼女を怒らせたが……それは今考えてみると、ガキが好きな女の子をいじめるのと一緒だ。

好きだから……自分を見て欲しくてからかい、困らせてみたくなる。

結衣を起こさないように、そっとベッドから起き上がると、彼女の顔を見つめた。

結衣には日本に帰してやるって約束したが……。

「悪いな。これでお前を日本に返せなくなった」

まだ眠っている結衣に謝ると、彼女の唇に口付ける。
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