イケメン小説家は世を忍ぶ
……許せ。

心の中で謝ってベッドを出ると、絨毯の上に落ちている服を拾い上げて身につける。

もう一度結衣の方を振り返ると、彼女の左手の指輪が目に映った。

そう言えば、まだ結衣に指輪のことを説明していない。

他にも彼女に言わなければならないことはたくさんある。

彼女が落ち着いたら話をしよう。

朝倉さんにも結衣の無事を伝えないとな。

そう決めると、自分の部屋を後にする。

すると、廊下でキースにばったり会った。

「あっ、ケント様」

「おはよう。お前、朝早いな」

乱れた髪をかき上げながらキースに挨拶すると、そんな俺が疲れているように見えたのか、彼は気遣わしげな表情で尋ねる。
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