イケメン小説家は世を忍ぶ
思い出すように言ってキースはクスッと笑う。

こいつは俺が別荘にヘリで着いた時のことを言っているのだ。

キースの従者が俺を気遣って結衣を運ぼうとしたが、俺は『自分が運ぶ』と言って譲らなかった。

自分のせいで結衣が怪我を負った責任も感じていたが、彼女を他の男に触れさせたくなかったのだ。

俺が無言でいると、キースはさらに続けた。

「昔は、女性にはもっとクールな態度で接していたのに……。彼女は違いましたもんね。東京のホテルで彼女を見かけた時、あなたは心ここにあらずって感じでしたよ」

「……お前、面白がっているだろう?」

わざとギロッと睨むと、キースはクスクス笑いながら謝った。

「許して下さい。独り者のひがみです」
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