イケメン小説家は世を忍ぶ
「あら、お兄様もいらしたのね」

「……まあね」

キースが半ば呆れ顔で言うが、セシリアはすぐに俺に視線を戻した。

「朝食の準備が出来たので呼びに来たんです。……ケント様、その……引っ掻き傷……」

「ああ、ちょっと猫にな」

ベッドでの結衣を思い出しながらそう言葉を濁すと、セシリアは訝しげな視線を俺に向けた。

「……そうですの。ところで、あの方の食事はどうしますか?」

『あの方』というのは、結衣のことだ。

「多分……お昼まで寝てるだろうから、後でいい」

「彼女……怪我はだいぶ良くなっていますよね?いつ日本に帰るんですか?」

「彼女は日本には帰らない。ずっとここにいる」

はっきりとセシリアに告げると、彼女は微かに目を見開いた。
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