イケメン小説家は世を忍ぶ
……やってしまった。

両手で顔を覆い、唇を噛む。

一時の感情に任せてケントと身体を重ねた。

「私……馬鹿だ」

後悔するのはわかっていたはずなのに、どうしてケントを拒まなかったのだろう。

確かに……彼に抱かれてひと時の幸せを感じた。

でも、それはマッチの炎と一緒でほんの一瞬で消える。

決して永遠のものではない。

「別れが辛くなるのに……」

ケントが今ここにいなくて良かったのかもしれない。

どんな顔して会っていいかわからないもん。

出来れば今すぐにでも日本に帰りたい。

これ以上、ケントの側にいるなんて無理だ。

彼のことを忘れられなくなる。
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