イケメン小説家は世を忍ぶ

セシリアさんは敵意剥き出しの目で私を見るが、自分にはどうしてここまで嫌われるのか理由がわからない。

「……ごめんなさい」

わけもわからず謝罪するが、それでもセシリアさんの気は収まらず、私に驚愕の言葉を投げた。

「私はね、ケント様の婚約者なの。婚約者でもないあなたがケント様の部屋にいるのを容認出来ると思う？」

ケントの『婚約者』って言った？

ショックで頭の中は真っ白。

セシリアがその後何と言ったかはわからなかった。

……どうしよう。

私……婚約者のいる人と寝てしまった。

なんて取り返しのつかないことをしてしまったのだろう。