イケメン小説家は世を忍ぶ
ケントのことを持ち出され、もう何も言えなくなった。

「ドアの外に私の護衛を待たせておくわ」

黙る私にセシリアは口の端を上げて告げる。

彼女が部屋を出て行くと、額に手を当てた。

銃で撃たれたのは肩なのに、胸が苦しくて……痛い。

すぐには動けず、しばらく呆然としていた。

ケントに婚約者がいたなんて……。

王子様だもん。

当然いるわよね。

それなのに私は……自分の望むまま彼を求めた。

ほんと……救いようがないバカだ。

ギュッと布団を掴むと、手の甲にポタポタと涙が溢れ落ちた。

しっかりしろ、結衣。
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