イケメン小説家は世を忍ぶ
十分ほど歩くとようやく城の裏口に出て、目の前に黒い高級車が停まっていた。

「お乗りください」

スーツの男性が後部座席のドアを開けて促す。

言われるまま、私は車に乗り込んだ。

革張りの高級レザーシートに座ると、スーツの男性は助手席に座る。

運転席には四十代くらいの男性がいて、私を連れてきた助手席の男性と話をする。

セピオン語なのか何を言っているのかわからない。

本当に飛行機に乗って日本に帰れるのだろうか?

知っている人間がいなくて不安にならずにはいられない。

やがて車が発進して城を離れていく。

小さくなる城を悲しい思いで眺める。

これで……ケントともお別れだ。
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