イケメン小説家は世を忍ぶ
ベストセラー作家ってそんなに偉いんですか!

心の中で悪態をつきながらも、自分の感情を抑えて低姿勢でお願いする。

「締め切り忘れないで下さいね」

「それはお前の働き次第だろう」とピシャリと桜井先生に言い返された。

「お前がタイプすると必ず誤字脱字があるから、その修正の時間も必要なんだよ」

桜井先生の歯に衣着せぬもの言いにカチンとくる。

それは悪かったですね。でも、深夜に働かされたら集中力も持続しませんよ。

そう声を大にして言ってやれたらどんなに胸がスッキリするだろう。

だが、そんなこと言って彼の機嫌を損ねたら朝倉出版は終わりだ。

うちの出版社にしてみれば桜井先生は救いの神。

彼がいなければうちのような小さな出版社はつぶれていたかもしれない。
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