イケメン小説家は世を忍ぶ
大手の出版社だって何とかして桜井先生の本を出そうと躍起になっているけど、彼が頑なに拒否してるらしい。

何故桜井先生はうちの出版社を選んだのだろう?

先生ほどの人なら大手出版社の方が待遇も良かったはず……。

桜井先生が凄い小説家というのは本を読んでもわかったし、仕事をお手伝いしても流石だって思った。

昨夜口述タイプに付き合わされた時は、まるで本でも読んでるように彼の口からスラスラと言葉が出てきて……。

待ったをかけて作業を中断させたのはいつも私。

桜井先生は不機嫌そうに顔を歪めながら、私がタイプし終わるのを待っていた。

一体彼の頭の中はどうなっているのだろう?

頭の中に原稿用紙が浮かんでいるのかな?

そんなことを考えていると、フワッと風が吹いて桜の花びらがヒラヒラと舞い散った。

ピンクの綺麗な花びら。

この庭の隅には、大きな垂れ桜の木が一本ある。
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