イケメン小説家は世を忍ぶ
「戻るのはいいが、着替えを用意して夕方までに戻ってこい」

桜井先生の言葉に驚き、私は首を傾げて彼に説明を求めた。

「え?着替えですか?」

「夜中に構想が浮かぶかもしれない。小説が出来るまでうちにいてくれないと困る。まあ、原稿落としてもいいなら無理にとは言わないが」

猫を胸に抱きながら桜井先生はうっすらと笑みを浮かべた。

この男は~‼

ギュッと拳を握りながら歯ぎしりする。

「わかりました!着替えを持って戻って来ます!」

ガタンと音を立てて椅子から立ち上がると、鼻息荒く返事をした。

リビングの窓から中に上がろうとすると、桜井先生に呼び止められる。

「ああ、そうだ。ついでに牛乳買ってきてくれ。こいつにやる牛乳が切れたんだ」

何かがブチッと私の中でブチ切れる音がした。
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